「権力によらず、能力によらず、わたしの霊によって。」
(ゼカリヤ4章6節 新改訳)
竹内愛二、嶋田啓一郎らを発起人として1960年に日本キリスト教社会福祉学会が創設されて以来、半世紀以上が経ちました。このたび、市川一宏前会長よりバトンを渡され、その責任の重さを痛感しているところです。第九代目の会長就任にあたり、本学会として取り組むべき4つの重点課題をあげておきます。
一つ目は、学会の独自性を一層明確にしていくことです。この半世紀の間に社会福祉関連学会も増えてきました。それぞれ諸学会はその特徴と独自性があるかと思います。もしそれを失えば、早晩役に立たず見捨てられ存立の意味を失っていくでしょう。そこでキリスト教社会福祉学会の独自性とは何か、という問いを改めて皆で考える機会にしたいと思います。その前提として、本学会は、聖書の「物語」を共有して、現代社会問題に立ち向かう群れということだと思います。イエスの言葉を借りれば、「地の塩」として生きるということでしょう。「あなたがたは地の塩である。だが、塩に塩気がなくなれば、その塩は何によって塩味が付けられよう。もはや、何の役にも立たず、外に投げ捨てられ、人々に踏みつけられるだけである。」(マタイ5章13節)
二つ目は、学会と教会とのつながりです。これまで必ずしも両者は有機的連携をもってきたとは言えません。教会が市民的公共圏のなかで福祉の役割を果そうとする機運が今、少なからず見えようとしています。しかし、教会派・社会派という分断をしてしまった過去の傷は否めません。いまだに癒えていない古傷なのかもしれません。これらの傷をまずは直視し、学会が先導的に修復すべき支柱としての思想と理論を発信すべきでしょう。教会から頼りにされる学会を目指します。
三つ目は、社会福祉実践現場とのつながりです。ここでは日本キリスト教社会事業同盟との関係を一層強化し、キリスト教主義にたつ社会福祉法人、NPO法人、個人の実践家と緊密に連携をとり、福祉現場をあらゆる面からバックアップすることかと思います。福祉実践現場から頼りにされる学会を目指します。
そして四つ目は、グローバル化した世界とのつながりです。具体的には北米のThe North American Association of Christians in Social Work(NACSW)や韓国のキリスト教社会福祉学会と連携していくことです。これらを通して、まさに “Think globally, act locally” を実現したいと思います。将来的にはインターナショナルな「国際キリスト教社会福祉学会」の創設にも関与したいと思います。
これらの課題は大きく、それに比して私自身は小さな弱き器ですが、万軍の主に頼り、「権力によらず、能力によらず、わたしの霊によって」(ゼカリヤ4章6節)前進したいと思っています。神が支え導いて下さるのですから、私自身は力まずに、自然体で、みなさんと共に、一人の僕として率先的に仕えていきたいと思います。ご一緒に、「信仰と希望と愛」を合言葉に主イエスが船頭をされる船にのって航路をわたっていきましょう。主に励まされつつ。
2017年8月3日 日本キリスト教社会福祉学会会長 木原活信